Z31 History

 

 

1983.9

精悍さの中にも気品ある美しさを兼ね備えたZ31のスタイリング。
1983年9月16日、新型フェアレディ Zが発表された。「Z」にとって2度目のフル

モデルチェンジであり、これがZ31型フェアレディ Zである。

当時はスポーツカーの進化はめざましい時代であり、誰もが憧れた「スポーツカー」

と呼ばれる車達。歴代のフェアレディは常にその中にいた。

日本を代表するスポーツカーとしてすでに100万台の生産ラインを突破し、5年

1ヶ月ぶりにフルモデルチェンジを受けたフェアレディ Zは、伝統の直6を捨て、

全車V6エンジン、全グレードにターボチャージャー(国内仕様)を搭載していた。

当時の広告では、「NEWフェアレディ Z、登場」の文字と共に、自信あり気な「較べることの無意味さを教えてあげよう」とのキャッチコピー

が踊り、VG30ETを搭載するトップグレード300ZXの、国内最強の高性能ぶりをアピールしていた。もちろん高性能なのはエンジンだけ

ではなく、シャシー面も最高速度250km/hという超高速域での剛性をテーマに開発され、フェアレディZは技術の日産のフラッグシップカー

として先代よりも大幅に進化を遂げる事となった。

Z31型フェアレディZの開発コンセプト  

このZ31型フェアレディ Zの開発コンセプトは次の通りである。

伝統のZフォルムを継承しつつも高速域での性能向上のために空力特性

 を徹底的に追求し、流麗かつ精悍なスポーツカー・スタイルを創造する。

世界トップレベルの動力性能の実現。

抜群の操縦性、走行安定性、および制動性能の実現。

快適性、居住性の向上。

高い安全性。

経済性の向上で社会的要請に応える。

新機構、新技術の採用。

1983年9月16日、東京・東銀座の日産自動車本社で行われた
発表会で自ら陣頭に立ってジャーナリストの質問に答えていた
石原社長(当時)。
  
具体的には、CD=0.31というエアロダイナミクス、全車V6ターボによる

圧倒的な速さ、3ウェイアジャスタブルショックなどを特徴としていた。

このZ31型フェアレディ Zのスタイリング全体については、Zがである事が

明らかに判るように配慮しながら変わったという印象を与えるよう努力され

たと言う。9月26日、FISCOで行われた日産主催の新型フェアレディーZ試乗会では、久米副社長(当時)も出席し、

「スポーツカーであるべき姿を追求した」とその挨拶の中で述べている。


ボディスタイリング

モノコック構造のボディは、フロントフェンダーやエンジンコン
パートメント内板、ドア外板などに高張力鋼板をボディの約
29%相当分に使用して軽量化に務めたというが、装備類の
充実などもあって結果的にはTバールーフのS130よりも重
くなってしまっている。


初代Zのイメージを残すZ31のリアクォータービュー。
スポーツカーのコンセプトを語る時、どのような走りがスポー
ツカーとしてふさわしいかという追求がされる事が重要だが、
Z31はフェアレディZと言うスポーツカーのスタイルの継承
に大きなウエイトを置いたとも言える。
新しいボディスタイリングは伝統的なイメージを継承しながら、先の2代に比べて直線を

基調としたデザインとなったのが特徴である。

先代のS130と同様,2シーターとそれを原点とした2by2の2種類のボディが当初より

全グレードにラインナップされていた。

2by2は、2シーターに比べてホイールベースで200mm長いが,前後のオーバーハン

グは2シーターと同じ。重量に関しては2シーターに対して300ZXで40kg、200ZGで

35kgの増加となっており、全高では、後部座席の頭上空間を確保する為に2シーター

より15mm高くなっている。また、フロントオーバーハングを短くし、重量バランスを優先

させて操縦性の向上が図られているほか、バンパーとフロントスポイラーを一体化させ

たソフトフェイシアを採用。ウインドウは、ガラス面が極力大きくされ、明るさ、透明感を

持たせたものとなっており、サイドウインドウは鋭角的に切り画いたシャープなものとな

っている。リアには大型テールランプおよびレンズ状のエンブレムを採用。

従来のイメージを残しつつ新しいZのスタイルとして引き締まった感じを持たせてある。
ライトには特徴的なパラレルライジングヘッドランプ

を採用。収納時には低く構え、見据えるような精悍

な表情を見せ、点灯時でも低く抵抗感のないもの

で、当時国内最高のCD=0.31(フロントスポイラ

ーの追加で0.30)という空力性能にも貢献して

いた。
これは従来のリトラクタブルヘッドランプに

比べて光軸の狂いが少なく、走行時にもドライバー

の視界をさえぎらないものとなっている。

欧州仕様に標準、国内仕様にオプション設定
されていたフロントスポイラー。これを装備する
事でCD値は0.30へ、CLfF(前輪揚力係数)
も0.15から0.13へとさらに向上。

同じく欧州仕様に標準、国内仕様にオプション設定され
ていたリアスポイラー。これを装備する事でCLr
(後輪揚力係数)は0.08から0.04へと大きく向上。
インテリアは直線を基調とした当時の最先端モードとなり、メーター回りにスイッチ類を集中配置して視認性、操作性の向上を図った

ほか、メーター照明はオレンジ色となっており、夜間のドライブでの疲労を軽減している。

上下方向に並行移動するヘッドランプ。
比較的シンプルな機構で、スイッチを押し
てからわずか0.6秒で完全に開閉する。

伝統的なレイアウトを採用したメーターパネル。
ステアリングには変形2本スポークを採用。

スポーツカーらしからぬゴージャスな雰囲気さえただよう室内。
走行時における車内の静粛性もまた然り。写真はZGの2by2。


それに伴い居住性の確保も忘れてはならない。先代に比べて室内幅が20mm拡大

されたことでまず空間そのものが拡大され、シートのスライド可能量も増えている。

そして、ラゲッジスペースが拡大され、使い勝手も大幅に向上。

乗降性を上げるためのメモリー付きチルトステアリングの採用もその一つである。

また、300ZXにはマイコン制御の上下独立自動調整オートエアコンが標準装備され

ていた他、200ZGと300ZXにはダイバーシティFM受信システムによってラジオ受

信性能を向上すると共に80Wの大出力を持つ8スピーカーシステムを装備して立

体感に溢れた大迫力サウンドを実現している。


ZGの2by2のリアシート。リアシートは完全なセパレート式。
左右別々に折りたたむ事ができ,多彩にラゲッジルームを
活用できる。
さらにフロントシートには人の体形や好みに応じられる8ウェイ機能を持たせた

セパレート型リクライニングシートを採用するなどして、3代目フェアレディZは、

スポーツカーである高級車という快適な車に生まれ変わっていた。



オーディオシステムは多機能表示により操作性を向上させたほか、
世界で初めてラジオとカセットのスイッチが兼用となったシステムで
ある。また、300ZXと200ZGにはリアラゲッジルームとドアに6.5
インチのダブルコーンスピーカーを配し、高音用に1.5インチのスピ
ーカーを4個インストに配した80Wの大出力をもつ8スピーカーシス
テムを装備して迫力あるサウンドを実現。
200ZSではインストの高音用スピーカーのない4スピーカーシステ
ムとなり、200Zではさらにリアにスピーカーのない2スピーカーシス
テムとなっている。
上は300ZXに標準装備されるマイコン制御のオートエアコン。エアコン自体
もコンプレッサーおよびコンデンサーの容量増大、室内吹き出し能力の向上、
吹き出し音の静粛化などにより空調性能を向上させているが、このオートエ
アコンでは世界初となるマイコン制御の2層流式を装備し、人間工学に基づく
精密制御によってセットした室温だけでなく、その時の外気温および日射量
に従い頭部と足元の温度がそれぞれ最も快適になるように制御される。

右上は300ZXにオプション設定されていた電動8ウェイパワーシート。
ヘッドレスト上下調整、ヘッドレスト前後調整、スライド調整、リクライニ
ング調整、リフター、ランバーサポート、サイドサポート、サイサポートの
8ウェイ調整機能を持つセパレート型リクライニングシートである。

メカニズム
日産のフラッグシップカーであり、日本を代表するスポーツカーである

フェアレディZの3代目としてデビューしたZ31には当然、技術の日産と

言われた当時の日産の最先端の技術が用いられていた。

メカニズムの解説については別途こちらを参照。
     
Z31は 「ヨーロッパの高性能スポーツカーを凌駕する走りの実現」 を目標として開発され、その美しいスタイルと圧倒的なパフォーマンス

で新世代のスポーツカーとしての最高のデビューを果たした。が、Z31はスポーツカーとしての大きな欠点とも言える点を持っていた。

スタイル、動力性能こそ欧州を向いていたが、最大のマーケットであるアメリカ市場を捨て切れずに、足廻りを従来のグランドツーリング

カー的な味付けにしてしまったことである。その為、Z31の特徴は高速直進安定性と快適性に集約されており、直進こそ速かったが、

コーナーではその大柄のボディを持て余し、残念ながらそれはスポーツカーと言うよりもむしろ高級GTカーというイメージが強かった。

しかし、230psの実力は名実ともに当時国産最強であり、高いレベルでバランスしているシャシー特性と空力特性はその名に恥じない

ポテンシャルをZ31にもたらしていたと言える。
     
5速2400rpmで100km/h、5400rpmでほぼ230km/h。レッドゾーンは6000rpmから。6500rpmで過回転防止の為にレブリミッターが入る。
Z31(300ZX)は日本車国内仕様の最高速度記録をあっさりと塗り替えた。輸出仕様の最高速は実に250km/h以上にも達する。
5MT車での加速性能は300ZXのシーターで0−100km/hが6.9秒、0−400mが15秒。2by2は0−100km/h性能で1.8秒、0−400mで1.1秒これに劣る。