Z31 mechanism before minor change

 

ここでは、当時最先端の技術が用いられていたZ31のメカニズムについて少し触れてみよう。
   
エンジン

国内仕様に搭載されるエンジンはVG30ETとVG20ETの2種類。

VG20ETはすでにセドリック、グロリアに搭載されていたもので、60度の

V型6気筒、ボア78mm、ストローク69.7mmの1998cc。圧縮比は8.0

で最高出力170ps/6000rpm、最大トルク22kgm/4000rpmを発揮。

基本的なメカニズムはVG20ETもVG30ETも同じだが、VG30ETは

ボア87mm、ストローク83mmの2960cc。ボアピッチはVG20ETと同じ

108mmだが、ブロックの高さは違う。圧縮比は7.8で、

最高出力230ps/5200rpm、最大トルク34kgm/3600rpmを発揮。

国産最強の230psもさることながら、約1600rpm〜5500rpmまでの

広い範囲で30kgm以上のビッグトルクを実現している。


国内仕様は2シーターと2by2の2種のボディに水冷V6SOHC12バルブに
2リッターターボのVG20ETと3リッターターボのVG30ETが設定されており、
VG20ETは170ps、3リッターのVG30ETは国産トップの230psを発揮。

   
300ZXに搭載され、当時国産最強を誇ったVG30ET。Z31型フェアレディZの発表を機に、

日産のエンジンには「
PLASMA(プラズマ)」というシリーズ呼称が冠せられることになった。

PLASMAとは「Powerful&economic(パワーと経済性を両立させた)Lightweight(軽量な)

Accurate(精密な)Silent(静かな)Mighty(力強い)Advanced(先進的な)」と言う頭文字を

連ねた造語で、先進のテクノロジーと最新のエレクトロニクス技術が生み出した日産の新世紀

エンジンシリーズの呼称として採用されたと言うが、下はマーチのMA10から上は300ZXの

VG30ETまで、約20種類のエンジンがこれに含まれる。
ターボチャージャー

ターボチャージャーは共にギャレット・エアリサーチ社製のT03型を使用しており、最大加給圧は

VG30ETで350mmHg(0.46kg/cm2)、VG20ETで370mmHg(0.49kg/cm2)。

ターボチャージャー入り口形状のデュアル化や、出口のスイングバルブ・ハウジングをエキゾー

スト・アウトレットと一体化、入り口の内径を65mmと大きく設定する事で、排気干渉の低減、

排気流動の改善と加給効率の向上を実現している。

Z31に搭載されるギャレット・エアリサーチ社製
T03型ターボチャージャーのカットモデル。
トランスミッション

トランスミッションはVG20ET、VG30ETとも5速MTを基本とし、2シーターの300ZX、2by2の200ZS、ZGと300ZXにのみ4速ATが

選択可能だった。

300ZXの5MTはボルグ・ワーナー製のT5型。
ボルグワーナー製を採用したのはVG30ETの
大出力に対応できる適当なMTが当時日産に
なかったからである。

VG30ETに組み合わされる5MTはボルグ・ワーナー製のT5型。

VG20ET用には日産の71C型を使用しているが、ワーナータイプのシンクロ方式で、

1、2速のシンクロサイズを拡大し、シフトフォークやロッド類の剛性を上げるなどの改良を

施してある。

ATも2種類用意されており、200ZG、ZSの2by2用には日産最新のマイコン制御OD付き

4速フルロックアップATが用意されるが、なぜかトップグレードの300ZXに組み合わされる

OD付き4速ATはロックアップ機構を持たない従来の一般的なATが採用されていた。

その理由は、「VG30ETの高出力大トルクに対応する為」となっている。
ファイナルドライブはR200型と呼ばれる物で、MT/ATともVG30ETには減速比3.545。VG20ETには4.111が組み合わされる。

LSDは設定されていなかったが、これは開発担当者の趣味の問題だとか。
サスペンション

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがセミトレーリングアーム式の4輪独立懸架方式を採用。

形式こそ先代のS130と変わらないが、ハイキャスター、ロートレールとし、コーナリング性能が大幅に向上したスーパーキャパシティ

サスペンションとなっていた他、全車に減衰力三段階切り替え式の3ウェイアジャスタブルショックアブソーバーを採用。

これはショックアブソーバーの減衰力を手元のスイッチで3段階に切り換えることのできる世界で初めて採用された画期的なシステム

であった。(ばねの自由長はグレードによって異なるが、ばね定数、スタビライザー径などは全車種とも同じものを採用。)

マクファーソンストラット式前輪独立懸架
 
セミトレーリングアーム式後輪独立懸架
ストラット式はサスペンションによるキャンバー変化が少ない為、旋回時に車体がロールすれば外側前輪の対地キャンバーはロールぶんだけ大きくなりがちであるが、キャスター角を大きくとって内側前輪をポジティブキャンバー化、外輪をネガティブキャンバー化する事で外輪のグリップを高め、旋回性能の向上させる事ができる。また、ハイキャスターにする事で本来はトレールが大きくなり、直進性は向上するが、外乱に対してのふらつきが問題になってくる。そこで、キングピン軸を後方にオフセットさせてトレールを小さくしてキングピン軸まわりのモーメントを小さく押さえている。リアはショックアブソーバーとコイルスプリングが別建てとなるセミトレーリングアーム式だが、当然新設計のもの。アームに0.7度の下反角、ホイールには1.1度のネガティブキャンバーを与え、ロールアンダーステアの強化でコーナリングパワー、高速直進安定性を向上させた他、アームの後退角を小さくしてロールセンターを下げてコーナリング時の内輪リフトを抑えたアンチスクォートジオメトリーの採用で急発進時のリア下がりを抑えている。
運転席のスイッチ切り替えでソフト/ミディアム/ハードの3種類のセッティングが選べる世界初の3ウェイアジャスタブルショックアブソーバー。
これは、可変オリフィス駆動のアクチュエーターとして小型モーターをショックアブソーバーのロッドに内臓しており、これでダンパーオイルの通路をシャッターで規制して3段階の減衰力特性を得るものである。
ソフトポジションといえども、ピストン速度が速いような運転域ではスポーツカーとしてふさわしい減衰力特性を持っている。また、システムには安全回路が装備されており、断線などが発生すればインジケーターのセレクトした以外のポジションが点滅、故障したショックアブソーバーは選択されていたポジションで正確に作動、他は自動的に「ミディアム」セットされて走行が続けられる。
ステアリング

ステアリングはラック&ピニオン式を先代から継承、剛性感の高いダイレクトな操舵フィーリングとシャープな応答性を実現。

200Zのみロックトゥロック3.6回転のマニュアルステアリングだが、他のグレードはパワーステアリングを標準装備。

エンジン回転数感応型インテグラルタイプで、剛性を高めたバルブ・トーションバーを採用して切りはじめの応答性を向上させている。

ブレーキ

ブレーキはフロントにベンチレーテッド式の4輪ディスク。また、8インチタンデムブレーキブースターを搭載する事で制動力を確保。

トップモデルの300ZXには、フロントφ274mm、リアφ290mmという大径プレートが採用されている。
     
ブレーキは全車が前輪ベンチレーテッドディスク、リアがソリッドディスクを採用。     全車に採用される8インチタンデムブレーキブースター。
シングルの11.3インチに相当し、確実な制動力を確保。
ホイール  
ロードホイールには300ZXと200ZGにサーフェスデザインのアルミ製6.5JJワイドリム

15インチを採用。300ZXのみ5穴となる。

スチール製には5Jの15の5穴、5J14と5.5JJ14の4穴が用意されていた。